第8期 妙手

文:masahide 2016年~


バンドも結成14年目に入った。

 

これはひとえに活動を支援してくれる家族、ファンの皆様、関係各位の絶大なるバックアップがあってこそである。

この場をお借りして厚く御礼を申し上げたい。

 

鍵盤を欠いたままの活動が続いたが、今のメンバーで表現できうる全ての事に挑戦し、ライブ活動を続けるのであるが…

 

言うまでもないが、バンドだけが経年する訳ではない。

当然ながらメンバーも同じく歳を重ねるのだ。

唯一のオリジナルメンバーとなったリーダーmasahide28の時に小さな産ぶ声をあげたのだが、彼も40を越えた。

それは何を意味するのか?

 

私生活に於ける立場の変化だ。

 

メンバー全員に当てはまる訳ではないが、私生活においては結婚や出産に伴い夫となり親となる。

職場では若手からいつの間にか要職となり、職場の中枢となり働き世代に。

入った当初は学生だったメンバーも立派に社会人として飛躍している。

この変化は実に大きいと言えよう。

とにかく時間がないのだ。バンド、音楽、練習に費やす時間が作りにくい状況となるのだ。

 

無理をしているメンバーもいたであろう。そして今もいるであろう。

これはバンド存続の為の大きな問題であり、永遠の課題になると考えている。

 

そんな事からまたもや一大事である。

 

これまでバンドの屋台骨を、その責任感と巧みな技巧、温厚な人柄、

誰もが信頼できる人間としての資質を持って支え続けてくれた最年長メンバーであるドラムのMatzが脱退を表明。

誰もが予期せぬ事態に一同耳を覆いたくなったのだ。そして誰もがその現実を受け入れる事を拒んだ。

脱退までの期間は後任選びの為の猶予を与えてくれ今更ながらに彼に感謝している。

 

やはり勝てない。家庭においての責任、社会人としての責任を蔑ろには出来ないのだ。責任感の強い彼ならではの苦渋の決断。英断である。

 

だが、捨てる神もいれば拾う神もいる。

諺というのはほんと上手い事言うもんだと関心させられる。

本当である。

 

ドラムが不在である事はライブ活動停止を意味する。

ドラムというパートの人口は非常に少なく、また彼のように様々なジャンルに精通し、技巧的なドラマーは希少。

彼の代わりなぞいようものかと頭を悩ませていたのだ。

 

話はだいぶ遡る。現在のROLLER COASTER!!の前身バンド、その名もローラーコースターというバンドが存在した。

このネーミングは非常に安直である事は否めないが今となってその事が後任ドラマーを引き付ける材料の一つとなるとは。

 

ややこしい記事となり大変申し訳ない。文中ではあるが一言お詫び申し上げる。

 

カナ標記のローラーコースターはオリジナルポップバンドとして結成された言わば一発即席バンドだ。

そのライブがジャンクボックスで開催されたとあるイベントだ。もう20年以上も前の話となる。

 

ローラーコースターにはmasahideKTAKEのいわゆる現在のROLLER COASTER!!創設メンバーが中心となり結成。その中に彼はいた。

よもや、この0期メンバーとも言えるドラマーと再びアンサンブルをする事になるとは誰もが想像出来なかった事実である。

 

 

彼の名はAkira

 

 

Matz脱退相談メールを受け途方に暮れる暇もないmasahideはその日の夜にAkiraにコンタクト。

15年ぶりぐらいであろうか。

彼の携帯番号が変わっていなかった事が幸いした。

俺は思いつかなかったのだ。現時点で彼以外の選択肢を。

 

彼は仙台のバンドシーンでは伝説になっているCOCKER SPANIELというバンドのリーダーで、温厚かつ熱い男なのだ。

このバンドはACIDMANや椿屋四重奏という名だたるバンドとの対バンを果たすなど、仙台のインディーズシーンを賑わせたバンドである。

何度かライブにも足を運び勉強させられ、そして惰性で音楽をやっていた当時の俺には敗北感も同時に押し寄せ、格の違いをまざまざと見せつけられたのを覚えている。

俺は当時から彼の卓越したスティック捌きと、本気で音楽と向き合う人間の感性に驚かされ、彼のプレイと人柄に心底惹かれていた。

歳下ではあるが実直な彼の大ファンであった。

そんな彼は当然ながら現在でも売れっ子だと思い込み、正直見込みなんてまるでないと思ってコンタクトしたのだが返事はというと、

レギュラーでのバンド活動を現在はしていないという情報を得るも、あっさりと断られる。即答であった。考えてもくれなかったのである。

家庭における立場の変化や音楽に対する熱量の変化であろうか。はたまた彼を揺さぶるようなバンドからのオファーがなかったのか…

それだけ彼の中でバンド活動、ROLLER COASTER!!など小さな存在であった事を意味するのであろうか。とも考えた。

 

しかしレギュラーで活動していないという情報はとてもありがたいものであった。だから諦めない。諦めてなるものか。

そんな気持ちから今までない盛り上がりを見せた2015年のジャズフェスの夜のステージ。

このライブの映像を送り、考え直してもらうようアプローチ。そしてメール攻撃の手も休めない。当然である。

 

しかし事態は意外や意外、翌朝に、まだ決まっていなければドラマー候補に自分も加えて欲しいと丁寧な連絡をくれ、

何度かのやり取りの後で、すんなりとスタジオに遊びに来てくれたのだ。

そして、3曲ほどセッションした後、バンドと交わってから数十分後に彼から嬉しい言葉が出る。

 

Akira 『あ、俺から(発言)いいですか?皆さん、よろしくお願いします!』

 

3代目ドラマー、ROLLER COASTER!! Akiraの誕生の瞬間である。あまりの即答ぶりにそこにいたメンバーも耳を疑った。

あまりの嬉しさからメンバーは大人気なくも肩を組み狂喜乱舞した事は記憶に新しい。

 

Akiraは俺たちのライブの熱量に心打たれたと語ってくれている。今までの活動のスタンスやライブにおける拘りが功を奏したかと思うと、

最高の褒め言葉での加入であり、自分達の信念を曲げずに活動してきた事が幸いした最高の事例でもあると言えよう。

 

そして既にご存知だとは思うがデビューライブでは卓越したドラミングを披露しMatterhorn Bobsleds vol.9が大盛況の後に幕を閉じた事は言うまでもない。

 

その後のスタジオワークも眼を見張るものがあり、真面目な一面は当然ながら、卓越したした技術と努力に裏付けされたキレのあるドラム、意外性のある印象的なアレンジなどメンバーを常に驚かせ、バンドに新しい風を巻き起こしてくれている。

 

 

 

Akiraが加入し益々勢いをつけたバンドは15周年ワンマンライブを一つの指標とした。

 

俺たちが活動の歩みを止める事はこの先もきっとないであろう。俺の個人的な希望も強くある事は否定しないが。

 

いや、止めてはいけないのだ。

 

今まで以上のパフォーマンスを見せること、そう思わなければツマラナイ。

 

ツマラナイのだ。

 

今後もライブ会場に足を運んで欲しい。

新しい何かをお見せ出来ると信じて止まないからである。