2013年のジャズフェスを以て新メンバーであったKeyboardのWatsが惜しまれつつも脱退を表明。
Trumpetのkohも前述のように脱退し、バンドはKeyboardとTrumpetというRollerサウンドを具現化する為には必要不可欠な核となるメンバーを失う。
主要パート2人を欠いてはライブ活動を続けられる状態にない。
そこで原点回帰。俺はMitchを伴い、とあるライブハウスに出向く。812のライブがあり、対バンにホーンのいるバンドが出るらしいとの情報を掴んだからだ。
あの日、あの場所に行かなかったら…
大袈裟な表現かもしれないが、今の俺たちはないかもしれない。
勢いのある音、甘いマスクで一際目立つ存在がいた。
TrumpetのKiichiroだ。
ライブ序盤はいわゆる並、無難。恐らくそのままライブが終了していれば誘わなかっただろう。
ステージをボンヤリと眺めていた。しかし、ラストの曲で彼が豹変する。
どこにそんなパワーを隠していたのか?と思えるほど艶やかで力強いハイノートを並べたソロを披露するのだ。
そして心打たれたのはその圧巻のパフォーマンスだ。全力でオーディエンスを10名はいただろうメンバーの中たった1人で煽り始めたのだ。記憶が正しければだがその会場にいたオーディエンスは20名もいなかったはず。
でも彼は止めない。ひるまない。恥ずかしがらない。その彼の姿を見た時、隣にいたMitchと顔と声を合わせたのだ。
「誘おう」と。嬉しかった。彼のような希有な存在に出会えた事が。
荒削りではあるが、未完だからこそ面白い。
すぐさま声を掛け口説き始めたのは言うまでもない。
そしてそこには仰天のスペシャルな出会いが付いてくる事など誰もが予想だにしなかったであろう。
その会場にオーディエンスとして来ていた心優しき青年に出会う。
彼の名はKeyboardのYushiである。
彼と打ち解けるのに時間はかからなかった。何故なら俺もMitchも相当酔っていたからである。
また酔っていなければ話す事もなかったであろう。バンドでは語り種であるトイレ事件だ。
俺に「トイレ入ってますよ」と声を掛けて来た優しい物腰の青年。
彼を見た事がある。ような気がする。が、思い出せない。
俺は尋ねた。「どこかでお会いしてませんか?」と。
彼が言った。
「ROLLER COASTER!!さんですよね?」と。
ここから彼の褒め殺しが始まり俺は彼にすっかり心を許し、浮かれていた。
つまりはとても良い気分だったのだ。実に単純な思考回路である。
聞けばALECKSというスカパラカバーバンドのメンバーだという。ピンときた。そして思い出した。
だが彼はトロンボーン奏者であった。
が、しかし光明が見えた。一筋の光が。彼は会話の中でピアノを幼少期より習っていたと…
俺は心の中で復唱した。今、ピアノを習っていたと言ったな。と。
そこに触手が伸びない程本来の目的を忘れて酒に溺れていた訳ではない。
酔って陽気な俺は彼のプレイも見もせずに強引にスタジオに遊びに来るように勧誘する。
そして更に輪をかけて陽気なMitchも勧誘に参戦。
後に知ったのだがMitchはこの素晴らしき出会いをよく覚えていないらしい。
酔って勢いのある俺とMitchに固められた若き青年2人はもはや何処にも逃げ場がないのであった。
卑劣なやり方。俗にいうパワハラの一種である。
彼らは旧知の仲であった。そしてROLLER COASTER!!の存在を知っていてくれた。
憧れのバンドですと世渡上手な二人でもあった。しかし大方の予想に反し加入に至るまで難航したのである。
スタジオには遊びに来てくれたものの、なかなか返事をしてくれないのだ。
俺は時間を見つけては長文メール攻撃で口説き続けるのだが、ソフトな返事が返ってくるだけ。
業を煮やした俺はメンバー全員がいる前で二人を正面に据え加入の意思を確認したのだ。
これでは「加入します」以外の言葉を発する事が出来なかったであろう。
強引で申し訳ない気持ちもあるが、どうしても2人の力が必要だったのだ。
それは単なる駒不足を補填する為ではない。心底2人の人柄とプレイに惚れ込んでいたからに他ならない。
後にYushi、Kiichiroから加入を熟考した経緯に付いて聞いてみたところ、転勤の話がチラホラ出ていた、土日が仕事なので活動ペースが心配だった。という夫々の理由があった事が判明。
しかしそんな事は御構い無しのバンドである事は容易に推察して頂けるであろう。
久々にフルメンバーが揃ったROLLER COASTER!!はこの後順調な音楽の航海を続けるのである。
Kを欠いてからはmasahideを中心として精力的にオリジナル曲を手掛ける。特筆すべきはMitchの優れたアレンジ能力だ。
Iori、Yushi、他のメンバーも楽曲ネタを提供するようになり、一丸となって新生ROLLER COASTER!!の礎を築き上げていくのだ。
みんなのアイディアを繋ぎ合わせて作った曲もある。
代表格は既に皆さんのお手元にあるであろう5thシングル、Right Now!!のカップリング曲のROCK ABILITY NIGHTである。
この曲は実に6人ものメンバーのネタが詰まった曲である。
このようなイレギュラーだが非常に面白い作曲スタイルも今後のRollerの魅力になるのではと感じている。
オリジナル黎明期からオリジナル躍動期に入ったと言えるだろう。
CDのリリースも積極的に行うようになる。
何度も聞いて欲しい。どの曲も俺たちの魂の欠片なのだから。
またこの頃、虚空蔵大菩薩・春季特別大祈祷会 寺フェス・新緑春祭りに3度目の出演を果たした当バンドは
前回に続き優秀賞を受賞する。実に面白いイベントであった。
全てがうまくいっていた。誰もがそう信じて疑わなかった時に悲報が入り込む。
転勤の知らせである。
しかもその赴任先は陸続きの地ではない、北の大地北海道だという。
Yushiが一旦バンド活動に区切りをつける事になり、サポートメンバーとしてのポジションでバンドを支える事となる。
わずか2年の期間であったが彼は大きな仕事をするのだ。アレンジャーとして、コンポーザーとしてもであるが、プレイヤーとしても非常に優れた能力を持ち、あらゆる楽曲に様々な表情を持たせてくれたのである。
北の台地での成功を祈って止まない。
Keyboardの固定がなされずともライブはできるのでは?と頭を切り替えてみる。いないものは仕方ないのだ。
しかしROLLERの楽曲はKeyboardありきで作られている曲が多いのである。
それは不在になってから気がついたと言っても過言ではなく、非常に間抜けな事でもあり、いかに今迄のKeyboardの面々に頼っていたかを思い知ったのだ。
精力的にアレンジをする事で全体のサウンドをタイトな方向に持っていく事に終止したのだ。
Keyboardによって華やかに拡張されていたバンドサウンドを骨太のロックなサウンドに。
が、ガチャガチャになりがちなロックもタイトにする事によりホーンが活きる。そう考えたからだ。
これはこれで案外悪くない。答えはもうすぐそこにあるのかもしれない。
現在も後任が見つからないままではあるが、
元メンバーであるKana、Yushiにも大きな屋外イベントなど時折オファーしてアンサンブルを楽しんでいる。
人との繋がりはありがたい物だと改めて実感するのである。
10人がレギュラーメンバーとなったが今後の活動にも期待を寄せて欲しい。
Masahide Mitch Hideki KOBA. HOPPY U Kiichiro Akira Takanori Yushi